奇形のクラゲ

実に実りの無い話

お料理ノート・前編

私は前科者の分際で休日によく料理をするのですが、これが楽しくて。

スパイスからカレーを作ったり、半日を掛けて羊肉を煮込んだりと。

合理的とは程遠い、そんなことが今はハッピーに思えるのです。

まあ私は不届者でしたから、元々は料理をするような人間ではありませんでした。

更生施設から1Kのアパートへ移ると、当然でながらキッチンがあるのですね。

1Kですから。

蛇口からお湯が出ることに感動して、風呂嫌いの私が幾度も浴槽に浸かりました。

明くる日、浮々とホームセンターで鍋を購入しキッチンに立ちましたが、何一つ料理を作れないことに気がついたのです。

家庭科の授業を、私には関係ないからと席で寝ていたのを思い出しました。

何をやってたんだ私は。

お前が何となく面白そうという理由で憶えた岡崎フラグメントより大切なことだぞ。

そもそも包丁もまな板もないのに、どうやって料理をしようと考えていたのか。

何なら買うべきは鍋ではなくフライパンだったのではないか。

斯くして私は、この日からお料理ノートを付けるようになりました。