運び屋を生業とする大先輩が先日綺麗な奥様との間に子供を授かりました。
結婚詐欺のつもりが情が移り、そのまま結婚に至ったという何とも幸せな馴れ初めであります。
この世に外道がまた一人増えた事を、大変喜ばしく思います。
この度は誠におめでとうございます。
今回はその先輩から過去に頂いた話を。
皆様はハチ・キュー・サンの仕事と聞いて、どのような物を思い浮かべるのでしょうか。
特殊詐欺や麻薬の売買から、強盗や殺人といった物騒な事柄までをご想像かと思います。
今のご時世、後者のような所謂過激派の影を見なくなりましたが、暴対法を初めとする警視庁及び各道府県警の皆様方の並々ならぬ努力の賜物かと、存ずる所で御座います。
エンコ詰めも流行らない昨今でありますから、単に時代なのではないかと言われたら、チョーク片手にバイト感覚で街を闊歩する婦警に礼を失する形となりますが。
さて、数多あるシノギの中からご紹介するのは鮭の密漁です。
鮭?そうあの鮭です。
極自然に皆様の食卓に並ぶ、鮭です。
私が言うのも白々しい話ですが、決して薬物等の隠語ではありません。
間の抜けた話に聞こえるやも知れませんが、これが意外と儲かるのです。
十月初旬に北海道のボロ小屋へ出向き、三ヶ月程泊まり込みで漁をします。
年が明ける頃にはビデオテープ三本厚の札束を下着の裏に貼り付け、再び飛行機の中から本土の景色を眺める事となります。
捕れた鮭が何処の誰の手に渡るのかは私の知ったことではありません。
知的好奇心は時として、顳顬に押し当てられたトカレフよりも派手な飛沫を上げます。
受験用の数学と似て、仕組みや理論は兎も角、“そうなるからそうなるのだ”と折り合いを付けるのも、貴方を長生きさせる秘訣やも知れません。
北の大地、人気の無い川の下流で鮭漁をする際、初めに聞かされる注意事項が、羆に気を付けろという物です。
普段ポリ公には呉々もという警告を受ける我々にとって、真っ先に気を付ける対象が羆というのは、血生臭くも最高のジョークであり、ジョークで終わらないのもまた、最高のジョークであります。
そもそも密漁をしている訳ですから、羆の爪に身体の前半分を削がれようとも、誰も見ていないという体のまま遺体が岸に放置されるのです。
幸い私は獰猛な野生生物に彼の乳房を食い破られる様を見ておりませんから、他人事と割り切り今日も気色の悪い笑みを浮かべながらウイスキーを喉奥に流し込む事が可能な訳であります。
更新頻度が落ちていた事もあり随分と突飛な話になりましたが、まだまだ皆様の知らない稼ぎ方があるというお話でした。