奇形のクラゲ

実に実りの無い話

検死のマゾヒスト

日本では、年間約300人もの方がセルフSMで死亡しているという現実をご存知でしょうか。

アジアを代表する変態国家日本と言えど、この数字は大変由々しき事態です。

私は生粋のサディストでありますからセルフSMをする方の気持ちは分かり兼ねますが、マゾヒズムを抱えていながら自らを責めるサディズムを持ち合わせているという、本来背反である二面性を宿した人間へ、畏怖のような物を感じます。

さて本題に移りますが、セルフSMをして亡くなった方がセルフSMをしていたと証明する者は一体誰なのでしょうか。

私が巫山戯たパラドックス的理論を提唱しているかのように思えますが、至って大真面目です。

“セルフ”の名の通りその方は一人で性欲求を満たしていた最中に、首に掛けていたロープが絞まり、将又蝋燭の火が燃え移り、死に至ったという訳です。

言わば、誰もその瞬間を見ていない。

自殺と異なり、セルフSMによる死は事故として扱われます。

現場に残された数々のSMグッズは、捜査の方向性を決定するのに充分な証拠となり得るでしょう。

結論さえ出てしまえば本部は解散し、SMプレイ中に亡くなった可哀想な人として処理されます。

もしそれが、誰かに殺されていたとしたらどうでしょう。

人をセルフSMプレイ中の事故に見せかけて殺すなど、大層馬鹿げた話に聞こえるやもしれませんが、有り得ない話ではない。

私がもし人を殺すのであれば、足りない頭を270度捻り、決して捕まらない方法を考えます。

相手が私のように性癖を拗らせた人間であれば、真っ先にその線が浮かぶのも自然の摂理でありましょう。

私は年間亡くなる300人余りの中に、偽装殺人による被害者が含まれているのではないかと考えます。

私も私を殺すなら、麻縄で自由を奪い、尿道に無数の針を刺し、喉に女物の下着を詰め窒息させるでしょう。

これにて、セルフSM中に息絶えた哀れな私の死体が一つ出来上がります。

人から買う恨みは最小限にしましょう。

誰が誰に殺されても何ら可笑しくない時代です。

皆様、一人ご自宅でお過ごしの際はどうかお気を付けて。