奇形のクラゲ

実に実りの無い話

毒物人間

何故か一定数、一緒にいると気を病んでしまう人種が存在します。

原因を辿れどそこに明確な根拠は存在せず、只々その人と共通の時間を浪費すると、心が擦り減るのです。

他者の心臓の鼓動を負値に陥れる程根の暗い人間ではなく、同時に底抜けに明るい訳でもない。

肩を寄せ合うと幸せが湧いて起こり、いざ別れれば行き場を失った感情が只管虚空へと歩き出す。

あいつは良い女だったとか、今も尚愛してるだとか、愛してたとか、あの時こうしていればとか、何か変わってたかとか、何も変わらなかったのか、とか。

都合の良い言い訳を探し、人は皆何かに依存することで、唯一自らの存在証明をし得るのです。

果たして人は、人を狂わせる程の価値を有するのでしょうか。

彼は、彼女は、貴方を朽ちさせる程愛らしいままを全うするでしょうか。

人は時折誰かに好きだと言われ抱き締められないとおかしくなってしまう、弱い生き物なのです。

人の精神を擦り減らすような人間は、良くも悪くも貴方にとって都合が良いのでしょう。

真に相思相愛であるのなら、若しくは只々貴方が盲目であり続けるのなら、何方かが独り頬を濡らすこともないのです。

いつまで気付いてない振りを続けるのか。

これは貴方への、私への、戒めであります。

今宵もまた痣色の錠剤を消化器官へと流し込み、夢に沈む振りをするのでしょうから。