奇形のクラゲ

実に実りの無い話

子宮中退

私の母は先天性の甲状腺機能亢進症で、子供を作る事が出来ないと医師に診断されていました。

しかし現に、私と妹の心臓は他の人間と何ら変わらず鼓動している訳で、普段小説を読まない私に“事実は小説よりも奇なり”という慣用句を使う資格があるかは解り兼ねますが、正しくその通りなのであります。

弥速、生命の神秘とでも言いましょうか。

先述の障害が災いしているのか定かではありませんが、コウノトリが私を逆さ吊りに運んだせいで、母は帝王切開で出産を行うこととなりました。

手術中、外科医のメスが前頭葉に突き刺さり脳が欠損してしまった私は、人でなしとしてこの世に生を亨けたのです。

本来の出産の過程を経ていない私の最終学歴は、子宮中退ということになります。

履歴書を書くのに大変苦労しました。

手術台の上でマグロのように解体された母に対し、恩を最上級の仇で返した私には、あの腐れアル中に紛いなりにも親孝行をする義務があります。

15歳の時に中学校で無理矢理書かされた両親への手紙を白紙で提出した罪悪感もあり、今ここで改めて感謝の言葉を述べたいと思います。

お母さん、産んでくれてありがとう。

あなたの息子は立派な外道に育ちました。