奇形のクラゲ

実に実りの無い話

友達が死んだ日

私は過去に2人、友達を亡くしています。

1人は病死、1人は自殺です。

私に“さよなら”と言い残し首を吊ったのは、2歳下の女の子でした。

首元で切り揃えた黒髪が似合うその子は人体改造が趣味で、左のニップルにピアスが開いていたのを覚えています。

彼女は元々両親から虐待を受けており、高校にも通わせて貰えない日々が続いていました。

私が18歳の誕生日を迎えた頃、援助交際で生計を立て親元を離れ暮らしていると連絡が入りました。

当時高校生だった私には何の力もありませんでしたが、君が汚い大人に抱かれ傷付いて行くのは悲しいとだけ伝えました。

援助交際を辞めればまた実家に戻ることになります。

それがどれだけ悍ましい事かは理解していましたが、会う度に増える彼女の痣に耐え切れませんでした。

私は、援助交際を辞められたら付き合おうと、守れもしない約束をしました。

暫くして連絡が途絶えました。

彼氏でも無い私が兎や角口出しするのが鬱陶しかったのか、私のことを思い敢えて連絡を絶ってくれたのかは定かではありませんが、1年半程、お互いが何処で何をしているのか分からない状態が続きました。

夢に彼女が出て来なくなった頃です。

久しぶり、と短い本文のみのメールが届きました。

すぐにLINEのQRコードを送り連絡を取ると、意外にも彼女は元気そうでした。

介護職に就いて今は何とか自力で生活していること、人生を捧げても良いと思えるくらい好きな人が出来たこと、抗不安薬の服用を辞めたことなどを教えてくれました。

余り心配を掛けたくないという理由から、今後は特別な事がない限り連絡を取らないという約束付きで。

その年の晩秋、仕事が上手く行っておらず久々に会いたいと連絡を受けましたが、私自身も精神状態が不安定だった時期であり、それと無く断ってしまいました。

その数日後、長文のメッセージが送られてきました。

介護職を始めてから、職場での人間関係が上手く行かず、最近は仕事を休むことが増えていたそうです。

辞めていた抗不安薬にも再び手を伸ばし1人で生活することが困難になり、当時未成年だった彼女は両親の元に連れ戻されてしまったと、書いてありました。

私と連絡を取っていなかった時期に鬱病と診断され、同棲していた男には捨てられたそうです。

検査薬で調べたところ、その男との子供を身篭っていたことも分かりました。

私は涙で文章が読めなくなっていました。

携帯の画面を最後までスクロールすると、“首を吊って死にます、さよなら”とありました。

私は急いでLINEの通話ボタンを弾きましたが、彼女が電話に出ることは無く、SNSのアカウントも全て削除されていました。

以上、何の救いも無い話です。

誰にも話した事はありませんでしたが、ふと彼女の事を思い出したのでここに書き記しておきます。